AI新創企業CluelyのCEO、Roy Leeは昨日(3/5)、X(旧Twitter)上で自ら明かした。昨年夏にTechCrunchに対して述べた700万ドルの年間収益(ARR)は、冗談で言った虚偽だったという。この「ビデオ面接で答えを盗み見る」ことで一躍有名になった新創企業は、a16zから1500万ドルのAラウンド資金調達後、収益についての発言を控えている。
(前提:TwitterがThreadsの企業秘密盗用を告発!マスク氏:「不正は許さない」)
(補足:Bloombergによると、a16zはなぜ米国AI政策の背後で重要な力となっているのか?)
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CEOがXに数行の投稿をした。
弁護士からの脅迫や記者の暴露、規制当局の介入もない。
彼は去年、メディアに対して述べた700万ドルのARRは自分の作り話だと認めた。
非常にシンプルに嘘を認めた形だ。
eh kinda, here’s our stripes from june 2025
got a random cold call from some woman asking about numbers and told her some bs, did not expect an article about it
here’s what we were doing at the time:
consumer arr 2.7m, run rate 3.8m
enterprise arr 2.5m, run rate 2.5m
… https://t.co/CzAoPRru2R pic.twitter.com/C5bXuz8HqW— Roy (@im_roy_lee) March 5, 2026
Roy Leeの物語は、不正行為の話から始まる。
2024年、彼はコロンビア大学の学生だった。彼と同級生のNeel Shanmugamは、「Interview Coder」というツールを作った。これはエンジニアの技術面接での不正を支援するもので、問題をAIにこっそり投げて答えを画面側のサイドバーに表示し、面接官に見えないようにする仕組みだ。Google、Meta、Amazonの面接でも使われている。
学校は彼らを退学処分にした。普通の話ならここで終わるが、Leeの物語は始まったばかりだ。
彼は「Interview Coder」を「Cluely」に進化させ、「あらゆる場面での不正を支援するサービス」と宣言した。
ビデオ会議、オンライン試験、即答を求められる場面すべてで、Cluelyはこっそりと最適な答えを提示する。つまり、「不正」を生産性ツールに変えることに成功したのだ。
この戦略は奏効し、Abstract VenturesとSusa Venturesから530万ドルのシード資金を獲得。
Cluelyは一夜にして、シリコンバレーで最も話題のAIスタートアップとなった。
Roy Leeのブランド戦略は明快だ。 不正は道徳の問題ではなく、競争の問題だと。AIを使うのが当たり前の世界で、先にAIを使って不正を働く者が勝ち、そうでない者は負ける。 このロジックは、技術面接の地獄に直面するエンジニアたちにとって非常に説得力がある。
Cluelyは議論をマーケティングの燃料に変え、インフルエンサー的なブランドに仕立てた。主流メディアが「不正文化を助長している」と批判すればするほど、無料の露出が増える。彼らの道徳的非難記事も、結果的にCluelyの購読者数を増やし、ブラックとレッドの操作でトラフィックを稼いでいる。
2025年6月、a16zはCluelyの1500万ドルAラウンドをリードしたと発表。
a16zのパートナーBryan Kimは、「彼は注意を収益に変える方法を見つけた」と語る。
この「注意」こそがポイントだ。製品の力ではなく、注目を集めることに重きを置いている。
Aラウンド後すぐの2025年7月、LeeはTechCrunchのインタビューに応じた。報道によると、CluelyのARRは一週間で倍増し、700万ドルを突破したという。
この数字は、彼らが本当に成功したと錯覚させるには十分だった。ARR700万ドルは、設立わずか1年の新創企業にとって、さらなる資金調達を促す説得力のある成長曲線だ。報道は広まり、Cluelyは「儲かるビジネス」のイメージを築いた。
しかし、その数字は偽りだった。
Roy Leeは昨日(3/5)、X上でこう書いた。「これは私が公に認めた唯一の嘘です。正式に撤回します。」
彼は付け加えた。あのときの電話は「ランダムな知らない人からの電話だった」と思っており、数字を尋ねられたので適当に答えただけだと。だが、それが記事になるとは予想していなかったと。
この言い訳自体もまた、嘘の一部である可能性が高い。
TechCrunchは後の訂正で、あのインタビューはCluelyのPR担当者が積極的にメールで調整したものであり、知らない電話ではなかったと明かした。これは巧妙に仕組まれたメディア操作であり、その内容には虚偽の数字も含まれていた。
ここには、嘘そのものより根本的な問題がある。つまり、誰もその数字を検証しなかったのだ。
a16zはAラウンド前にデューデリジェンス(DD)を行ったが、その調査はRoy Leeが一ヶ月後に偽の数字を語るのを止められなかった。
TechCrunchは700万ドルの数字を付けて報じたが、独立した検証は行われていない。メディアはスタートアップの自己申告に頼り、第三者の監査や法的義務もなかった。こうして数字は公の記録に入り込んだ。
その後、Cluelyは収益については一切触れなくなった。2025年11月、Roy Leeは「話題だけでは十分でない」と示唆し、事業の方向性を変えた。議論の的だった「不正ツール」から、AI会議記録アプリへと姿を変えた。
そして今年3月、彼は「正直に言う」と宣言した。以下はその時間軸だ。
2025年6月:a16zが1500万ドルのAラウンド投資
2025年7月:LeeがTechCrunchにARR700万ドルと虚偽の発言
2025年11月:Leeが「注意力不足」を示唆し、事業転換
2026年3月:LeeがXで700万ドルは嘘だったと告白
これは単なる新創CEOの嘘話ではない。
シリコンバレーには暗黙のルールがある。資金調達前には、「ビジョン的に」数字を語ることが許される。ARRは月次データの12倍と見積もることもできる。ユーザー数も無料試用アカウントを含めてよい。成長曲線も理想的な形に見せかけることができる。
この暗黙のルールが存在するのは、誰も本気で気にしていないからだ。VCは賭けをしているし、メディアはストーリーを求めている。誰も正確な財務詳細を必要としていない。
Roy Leeはシリコンバレーの創業者たちがよくやることをやっただけだ。数字を実際より良く見せ、そして、より不幸なことに、自ら嘘を暴露することで、また一つのマーケティング操作の始まりを作った。
不正を支援するCEOが、自らも不正を認め、ソーシャルメディア上で「新創業界の良心」のレッテルを獲得しようとしている。
次の資金調達も、もうすぐだろう。