執筆者:許倩、段泽宇
はじめに | 新興業態が伝統的刑法に直面したとき
過去2年間、仮想通貨、NFT、デジタルコレクションに関する事件は、初期の行政コンプライアンスリスクから、刑事リスクの高い分野へと段階的に進化してきた。
実務において、多くの案件は立件初期段階で「詐欺」と直接定義されることが多い。しかし、証拠の審査や構成要件の分析に入ると、表面的には見えないが、弁護の余地が大きく残されていることがしばしばある。
本稿では、マン昆弁護士事務所が取り扱ったNFTデジタルコレクションプラットフォームに関する刑事案件をサンプルとし、案件の定性争議、証拠の分析から最終的に不起訴決定を得るまでの過程を体系的に振り返り、その中から再利用・移用可能な実務的手法論を抽出し、法律関係者の参考とする。
案件の定性に関する議論:これは「詐欺」か、それとも「宣伝の行き過ぎ」か?
(一)基本事実:失敗したマーケティングが刑事立件を引き起こす
2022年、あるデジタルコレクションプラットフォームは販売促進のためにキャンペーンを展開し、外部に次のように宣伝した。
「コレクション販売収入は賞金プールに入り、規則に従って配分される。賞金プールの金額は100万円を下回らない見込み。」
キャンペーン終了後、市場環境の変化や販売不振の影響で、実際に配分可能な賞金プールは数万円にとどまった。一部の多額投入したユーザーは、プラットフォームに詐欺行為があると考え、集中して苦情や通報を行った。
公安当局は介入し、詐欺容疑で立件捜査を開始した。
(二)弁護士の初期判断:詐欺と異なる3つの重要なポイント
システム的な審査と事実整理の結果、弁護チームは本件と従来の詐欺案件とを明確に区別する3つの特徴を迅速に抽出した。
事業行為は実在する
プラットフォームは空殻ではなく、デジタルコレクションの出所は合法的で、実際に発行され、取引可能であり、事件発生前後も実運営を継続している。
宣伝用語は曖昧さを含むが、虚構の内容はない
「予想」などの未来志向、期待性を持つ表現を使用しているが、存在しないプロジェクトやルール、収益モデルを捏造していない。
結果は深刻だが、商業的な冒進に近く、違法な占有を意図したものではない
ユーザーの損失は客観的に存在するが、全体の行動パターンと照らし合わせると、行為者の主観的状態は、市場判断に過度に楽観的であったことに近く、他人の財産を不法に占有しようとする意図は見られない。
以上の判断に基づき、弁護チームは本件の核心的定性を次のように結論付けた。
本件は「宣伝の行き過ぎ型リスク」に近く、「詐欺型犯罪」ではない。
この判断は、その後の弁護活動の出発点および論理的基盤となる。
弁護の核心:結果にこだわらず、「構成要件」の分析に徹する
仮想通貨やデジタルコレクションに関わる案件では、弁護は「詐欺かどうか」の感情的な議論に陥りやすい。しかし、刑事審査の論理において、決定的な役割を果たすのは、結果そのものではなく、構成要件が証拠によって十分に証明されているかどうかである。
この認識に基づき、弁護チームは以下の3つの法律問題に焦点を絞った。
これが、我々が類似案件で繰り返し用いている「核心的分析パス」だ。
(一)「不法占有目的」の有無
弁護の焦点
関与資金は不法に占有・移転・個人処分されたか?
証拠の整理方法
プラットフォームの1年間にわたる実運営記録(人員、技術、サーバーなどの継続的投入)を取り寄せて提示。
売上収入が主にプラットフォーム運営に使われ、個人の浪費や資金の横領・隠匿がなかったことを示す完全な口座取引履歴を提供。
キャンペーン終了後も、プラットフォームが継続して運営やユーザーとのコミュニケーション、補償案を推進している客観的事実を示す。
結論
すべての客観的行為は、「継続的な事業目的」に向いており、「不法占有目的」には向いていない。
この段階で、詐欺罪の成立根拠を直接揺るがすことになる。
(二)「虚偽の事実の捏造・真実の隠蔽」行為の欺瞞
弁護の焦点
「予想不低于100万円」は虚偽の約束か、それとも商業的予測表現か?
証拠の整理方法
プラットフォームの事前市場分析資料を取り寄せ、「100万円」が当時の市場熱に基づく予測であり、虚構ではないことを証明。
同時期の業界内類似のマーケティング活動と比較し、「予想」の表現が業界内で一般的に使われていることを示す。
現存の証拠では、責任者が宣伝時にその金額の実現可能性を知りつつ虚偽の表現を行った証拠はないことを強調。
結論
この行為は、誇大宣伝や民事・行政レベルの誤解を招く不適切な宣伝に近く、刑事詐欺の「虚構の事実不存在」の証明基準には達していない。
(三)ユーザーの損失は、「欺瞞行為」に直接起因するか?
弁護の焦点
ユーザーがコレクションを購入したのは誤った認識によるのか、それともコレクションの価値や市場リスクに関する総合的判断に基づくものか?
証拠の整理方法
ユーザー契約において、デジタルコレクションの価格変動や市場リスクについて明示的に注意喚起されていることを指摘。
キャンペーン後期や賞金プールの金額が著しく不足している状況でも、取引を続けた一部ユーザーの事実を示し、投機的要素の存在を反映。
市場の急激な変動が損失形成の重要な外部要因であることを論証。
結論
完全な刑法の因果関係を構築するのは困難:
「欺瞞行為 → 誤認識 → 財産処分 → 不法占有」
ユーザーの損失は、多くの商業的・市場的要因が複合的に作用した結果である。
【延長的考察】刑事詐欺、行政違法、民事詐欺の境界線
本件の本質的争点は、刑法の謙抑性原則の適用にある。弁護士の核心的仕事は、正確な「法律的定性の移行」を完遂することだ。
刑事詐欺:不法占有を目的とし、根本的な事実を虚構する。
行政違法(虚偽宣伝):取引促進のために誇大・誤導的表現を行う。
民事詐欺:相手方を誤認させる虚偽の陳述を行う。
成功する刑事弁護は、問題を否定することではなく、適用すべき法律の枠組みに問題を置くことにある。
黄金期と勝利の動き:起訴審査段階の手法論
(一)なぜ起訴審査段階が「黄金の窓口」なのか?
弁護士が介入する時点では、案件は検察に送致されている。この段階には3つの顕著なメリットがある。
捜査資料はほぼ確定しており、証拠構造を全面的に評価できる。
検察官は独立した審査と心証形成の段階にある。
案件の定性には、実質的な調整の余地が残されている。
弁護士の核心的価値は、「起訴意見書」と異なる、論理的に一貫した案件分析の枠組みを提供することにある。
(二)戦術の重点:証拠評価の順序を再構築
資料を閲覧した結果、捜査機関は「結果重視、動機軽視」「言葉重視、客観軽視」の傾向があることが判明。
これを踏まえ、弁護戦略は証拠構造の体系的再編にシフトする。
まず、主観的目的の成立性を優先的に論証。
次に、資金流水や運営記録などの客観的証拠を用いて、「騙された感覚」の証言に対抗。
最後に、損失結果を評価し、市場環境の背景と照らし合わせて解釈。
この調整は、本質的に検察官に対し、別の論理で案件を「再計算」させることを促すものである。
(三)重要ツール:そのまま採用可能な不起訴意見書
本件提出の《不起訴法律意見書》の価値は、その文章の長さではなく、書き方の思考法にある。
各事実指摘には明確な証拠ページ番号を対応させ。
各法律結論は構成要件分析に基づき。
各業界の争点には、「刑事化しない」解決策を提示。
この意見書の目的は、単に説得することではなく、検察官の不起訴判断のコストを低減させることにある。
(四)リスクの閉じた循環:不起訴後の延長対応
不起訴は終点ではない。弁護チームは、クライアントのリスク延長管理も同時に支援。
行政面:宣伝用語の問題について、事前に改善策と弁明の方針を準備。
民事面:段階的なユーザーコミュニケーションと補償計画を策定し、紛争の拡大を防止。
真に効果的なリスク解消は、「刑事の遮断」「行政の緩和」「民事の吸収」を実現することにある。
案件の結果:2度の捜査打ち切りを経て不起訴へ
継続的かつ専門的なコミュニケーションの下、案件は検察に2度の補充捜査の差し戻しを受けた。
「捜査打ち切り」自体が、もともとの定性と証拠構造が起訴に耐えられないことを示している。
最終的に、検察は《刑事訴訟法》第175条第4項に基づき、「証拠不足、起訴条件未充足」として不起訴決定を下した。
法律関係者への3つの核心的示唆
新興分野の案件は、本質的に「定性の戦い」である。
弁護士が争うべきは、案件がどの法律的枠組みに収まるかである。
構成要件は最も明確な戦略マップだ。
事実や感情にこだわるよりも、構成要件を軸に証拠を組織すべき。
起訴審査段階は、案件の行方を左右する中枢の戦場である。
検察官の視点で書かれた高品質な法律意見書は、決定的な要素となることが多い。